映画「来る」を徹底解説!! なぜこんなに賛否が分かれているのか? あれの正体とは??
「来る」
第一印象!
これは怪作!!もうひたすら好き!!
こんなにも性癖に突き刺さる映画は初めてかもしれません!
超面白い!!!
ただ意外とレビューなんかを見てみると評価はそこまで高くない?
でももはやそんなとこまで愛おしい!!
否定の意見も分かるには分かるんです
でもこの映画でそれをいうのは野暮じゃん!!
要するに完全「ほ」の字です!
そんな来るどこがどうだったのか!?
・世間の感想、なぜ賛否が割れているのか?
この「来る」知識はほぼ0で見に行ったのですが、事前にうっすら聞いた情報だと
人間が怖い系、子供が怖い、まったく新しい映画、、、
などバラバラな噂ばかりが聞こえてきました。
どれが正しかったのかと言えばどれも正しい。当然予告のようにホラー映画としての要素もあります。
このことからも分かるように非常に
ジャンル分けが難しい映画になっています!
そのことが評価が伸び悩んでいることにつながっている感じに見えます。
完全なホラー映画として見るとホラーの要素が物足りず、人間関係について語り切れているかというとそうではない。
↑
これが見る側の混乱を引き起こしているようです。
本作、監督は「告白」「渇き」などを手掛けた中島哲也さん。中島監督は本作をホラー映画として撮ったつもりはない!という感じらしく。
実際予告でも「最恐エンターテインメント」と銘打って予告しています。
鑑賞後にこの監督のことを調べたのですが、この人がすごい難しい人!
そして今回はその監督がやりたいことをぶちまけたという感じがよくわかりました。
・来るを徹底解説
実は「来る」はある層にとっては超古典的に感じたと思います。自分もそこまで詳しくはないのですが、、
ただ一番最初に抱いた感想は、、洒落怖じゃん!
そう超懐かしい!!洒落怖!!
もうお話の基本の構成は完全に洒落怖!
洒落怖なんて知らない人がほとんどだと思いますが、洒落怖というのはかの有名なにちゃんねる様で一昔前に流行った「死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?」の略称で、
簡単に言うとにちゃんねるで作られていたウソかホントか分からないオカルト話の一連のお話を指します。
このシリーズはかなり面白くて自分も結構はまってた~
ガチで怖いものからほっこり系まで色々あるんですけど、ガチで怖い系の部類には結構パターンがあるものも多いです。
その中でも割とよくあるパターンなのが
主人公たちわけのわからないオバケ的なのに襲われる。
↓
やばいもう少しで死ぬ。
↓
霊媒師的な人と何らかの形でであう
↓
死に懸けながらもお祓いしてもらう
↓
実は昔からその土地に伝わる妖怪的なものだった
このパターンが結構あります。
で、この妖怪的なものは部落差別やおろした子供の祟り的なものというのがお決まりです。
そして「来る」も違うところはありますが、大まかなストーリーはこの感じ。
だから見る人(ねらー)が見たら懐かしかったんではないでしょうか
というかこれを知っていた方が分かりやすいところもある!
自分はホラー映画は苦手なので見てなかったのですが洒落怖は読んでいたのでスラスラ物語が入ってくるという。
いい意味で人が死にまくるホラーの典型
そして洒落怖の特徴でもあるのですが、名前に反し別に怖くなくてもいいという。
先ほども言ったようにほっこり系があったり単なる不思議な話があったり、、、
なので今回のこの映画自分的にはそういう意味も込めて
別にホラー映画じゃなくていいじゃん!というところがあったり、、
そもそもでレビューなどを見ると純粋なホラー映画として見に行ってる人が多いんですけどこれはホラーエンターテインメントです!
・琴子の生命を表す描写
琴子は最強の霊媒師として出てきますが、おそらくこれは生命力の象徴のような存在です。
一見、人間味がないように思えますが
ラーメンを豪快にすすっていたり、ビールを飲んでいたり、ゲームをしたり、、
やってることはかなり生き生きとしたものになっています。
だけど心の弱さもある、、、など実は作中で一番生きていて生命力を表すような存在になっているのが琴子です。
・今回の映画でみんなが分からないと言っている「あれ」の正体とは?
作中で散々登場しているものの最後まで具体的な正体が分からない「あれ」。正直自分はまだ原作を読んでいないので映画を見たうえでの考察になってしまいますが、
映画の中だとかなり的を得た回答になると思います。
これも洒落怖的な発想に近いのですが、
田舎というのは悪く言ってしまうと閉鎖的です。
冒頭で、主人公夫妻が故郷の田舎に帰り親戚の集まりにいくシーンがあります。その中でかなり多くの親戚の集まるのですが小さないざこざがいくつもあります。
その空間は田舎の劣等感や鬱屈とした不満そんなものがたまったものでした。
これが都会であればイライラのはけ口も見つけられるのでしょうがあまり人の入れ替わりがないであろう田舎ではそんな負の感情溜まってしまっていました。
そして実際に田舎に昔からいると言われている妖怪の名前も出てきました。
おそらく主人公たちに襲い掛かったのはこの田舎特有のモヤモヤ、昔からいる妖怪的なもの、この二つが混ざり合い強力になってしまったものだと考えるのがしっくりきます。
・沖縄のおばちゃんを殺す意味
このシーン印象に残った人も多かったのではなかったでしょうか??
いかにも活躍しそうなキャラ的にも濃い沖縄のおばちゃんたちが殺されるシーン
自分はこのシーンを見てNHKの連続テレビ小説「ちゅらさん」のおばあちゃんを思い出しました。
そのおばあちゃんのセリフで「命どぅ宝」という言葉が出てきます。これは命こそ宝という意味で戦争を経験した人が言うからこそ深いセリフとなっています。
もしかしたら年齢的にも本作に出てきたおばあちゃんたちは戦争で近しい人をなくしたりしていたりするかもしれません。
それだけでなくともおばあちゃんたちのなんとなくのキャラクターが見えたりするのですが、そんなおばあちゃんたちをあっさりと殺す怖さ。だれでも死んでしますかもしれないという恐怖が出てきます。
でも、そんなシーンでも笑える要素がある。ここが本作のすごいところ。
こわ面白いという新しいジャンルではないか、、、??
・巧みな構成
本作は大きく分けて三つのパートに分かれています。
一つ目は妻夫木演じる田原のパート
二つ目は黒木華演じる香奈のパート
そして最後に岡田准一の野崎のパート。
基本的にストーリーの構成として、物語の一番の解決すべき問題が序盤で明らかにされている方がエンタメとしては分かりやすいのですが、今回はそれが各所にちりばめられています。
どういうことかというと
一番の大きな問題は当然、「あれ」ことぼぎわんなのですが、個人個人にとっての問題は少しづつ違います。
田原は、本当の意味で家族を大切にする父親になること。
香奈は、育児や家庭の大変さに負けることなく母親になること。
野崎は、大切な家族を守るというリスクを恐れる自分の心を受け入れること。
このようにそれぞれの問題点を物語のちょうどいいタイミングで置いておくことにより飽きさせないという工夫が見られます。
そして大きな問題である「あれ」による恐怖を与え続けることにより、ノンストップエンターテインメントを成立させているのです。
・それぞれの役者のうまさ
毎度毎度言っているような気もしますが、本作はまさに怪!演!!
みんな超うまい!!
見た目から一見その人と分からない位に作りこんでいて、そこからもう全然違います。
そして!みんな当然目を奪われたことでしょう!
柴田理恵は普段からは想像できない。演技っぷり!!(ちゃんと演劇やってるすごい人なんですけどね、、、 こういうのを具志堅現象と呼んでいます)
やさしさと、怖さ、襲われる恐怖を見事に表現していました!!
そして黒木華!
ある意味ありがちな役ではあるんですけど表情の作り方などが破壊的に上手い。
狂っていくところや襲われた後の表情は思わず震えてしまいました!
・音楽のセンスの良さ
よく邦画の弱点として挙げられるのが音楽の弱さです。
洋画に比べると音楽の入れ方や、使い方が下手だということはよく言われてきました。確かに洋画を見ているとああこの音楽いいというようなことを思うことは多いのですが邦画だとその効果を実感することは少ないように思えます。
ところが今作、ほんとにM(音楽のこと)がいい!!
今作ではかなり多様なMが使われています。
物語が大きく動くシーンではアップテンポなノリのいい音楽、そうかと思えば祓いのシーンではいかにも神社やお寺などで聞けそうな楽器や、人の声。
観客の感情を先読みしたかのようにそのシーンに合う選曲がなされています。
思わずこっちのテンションもあがってしまいました!
これもこの映画のエンタメを支える大きな要因になっています。
・祓いのシーンの映像美
今回の映画の目玉ともいえるシーンで、「あれ」をわざと呼び寄せる儀式のシーンがあります。
最強の霊媒師という設定の琴子は、払える者であればだれでもいいから集める。というスタイルの儀式です。
実はこれ考え的にもすごく日本的。
クリスマスを盛大に祝ったかと思えば正月には初詣に行くのが日本人です。
なので、テレビのインチキ霊媒師から、沖縄の霊媒師、神官や巫女、韓国の祈禱師、お坊さんや、科学者まですべてを集めた儀式をします。
ここのシーンがすごくいい!!
祝詞(のりと)やお経を読む声などが混ざり合い、巫女は踊り、科学者はモニターの数字を見る。物々しい照明を焚き、盛り上がりが最高潮に達したところで一人の巫女が
「来るよ」の一言、、、、
ギャーーーーーーーーーーー!!!!
超映像美!これぞエンタメ!!!!
圧巻でした、、、、
・様々なシーンに見受けられるギャップ萌え
本作では様々な面でギャップによって生まれるエモーショナルな効果を多用しているように思われました。
そもそもでこのお話の展開の仕方がギャップがあるのです。
一見幸せそうに見える結婚生活を嫌味なくらいな描き方をしたと思ったら、いきなりホラーテイストが来るので、よりホラーが効果的になります。
そして見ていると分かるのですが、そのホラーシーンの中に少しづつ笑いの要素があります。
この笑いの要素のせいで「ホラー映画なのに冷める」というような声も見られるのですが、、
しかし!!!
分かんないけどもう十分怖いじゃん!!!!(漏)
別にそのお笑いの要素は監督の暴走などでは決してなく、笑えて怖いというお互いの魅力を引き立たせあう、エンタメとしても重要な演出といえます。
他にも先ほどの祓いの儀式のシーンでは、準備のしている土方の人たちは皆お札をつけて準備していたり、jkたちがはしゃぎながら少しづつ巫女さんになっていくという。
土方×心霊、jk×心霊、霊媒師×心霊、子供×心霊、
などという風に様々なギャップの要素がたくさんあります。この一つ一つを見ても心を鷲掴みにされるのですが、それがいくつも集まることによりさらに効果的になります。
・ゲロを吐きたくなるほどの妻夫木の描き方
ここの描き方が自分的にかなり好きだったところなのですが、もう生々しい嫌な人の描き方。恐らくこの監督こういう人間が超嫌いです。
そしてここにも人の負の感情がたまっています。
こんな人だったら死んでもいいんじゃないか(物語的に)という風にも少し思えてしまいます。
ここにただのホラー映画にはない隙があります。
「お願い!どうか生き延びて!」という人が生死をさまよっていたら怖いですが、一個目のパートの田原はそんな感じの人ではありません。
最悪死んでもいいじゃん、これがホラーなのに笑うための隙を残しているのです。
これが本作をエンターテインメントとして成り立たせているのに一役買っています
そしてこのリアルな描写があるからこそ物語序盤で一気に入り込めるという。。
まさに効果的な演出!!
・まとめ
本作はホントに賛否両論。
受ける人には受けるけど、分からない人にはホントに面白さが分からないというような感じになっています。
でも、やっぱりすぐれた作品というのはそういうものだと思います。
そういう意味でもこの作品はカルト的人気が出てもおかしくないのではないか?
というように思います。
皆さんぜひご鑑賞ください!!
ばーい!せんきゅー!